知的財産権の活用による地域活性化セミナー | 第2部 事例紹介およびパネルディスカッション : 最後に

平成19年11月19日 東北農政局にて行われた
「知的財産権の活用による地域活性化セミナー」 紹介ページ

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第2部 事例紹介およびパネルディスカッション

最後に
福井氏
福井 隆  氏福井 隆 氏
(東京農工大学大学院客員教授)
 鶴岡の地域は、だだちゃ豆を中心に間違いなく元気のスタートを切られて、広がっているのだなと思います。最後に私のほうから1つこんな話があったというのをご紹介します。
 だだちゃ豆のようにある程度、核になっているものが見えてきたらそれはやりやすいですね。実は近畿のほうの農政局の方から、ご質問いただきました。どういう質問かというと、「そういった前から有名なものだとか美味しいものがあればいいけれど、一般的にはJAを通じてきゅうりや大根だとかそういう生産している。そういったものを特産品にするのは、なかなか難しいのでは」というご質問いただいたのです。その質問に対して、その場にいた我々の仲間の梅原真さんというデザイナーが、「いやいやそうではない」と、お答えをしたんですね。具体的に彼はそのものの本質、いわゆるその商品の本質をよく見極めることが必要という答えだったのです。

山のてっぺん 山北みかん間城正博・作
山のてっぺん 山北みかん
 具体例を紹介します。高知県の山北町というみかんの大産地があります。そこの、間城正博さんというおじさんがパッケージのデザイン、いわゆる出荷のダンボールのデザインを、梅原真さんにどのようにつながったのか分からないのですが依頼してきたのです。それまで、おじさんは、「高知みかん」と印刷されたJAさんの一般的な箱で流通させていました。
 梅原さんはおじさんといろいろ話をして、どういうところで作ってるの、どんな人が作ってるの、どうやって作ってるの、いろんな話を聞いたんですね。
 おじさんが作っているみかんの圃場は山の頂上にあります。そこで、山のてっぺん、てっぺんみかんという名前をつけたのです。それで、間城正博さんの名前を入れて流通させました。そこであることが起こりました。
 東京の紀ノ国屋さんがこの箱を見つけました。別にみかんの中身は変わっていないのです。でも、紀ノ国屋さんで販売されるようになったのです。これはどういうことかというと、その地域性と言うのでしょうか、「山のてっぺん」というその地域を掛け算したのですね。

 梅原さんがもう1つのお仕事の話をされました。JAの系統で100%出されたお茶。先ほどの山北町近くの十和村(現在は四万十町)というところのお話です。そこで採れるお茶が、手摘みで丁寧に作られているにも関わらず、ほとんど静岡に送られていました。渋みの原料として使われていたのです。
 これをどうするかという話なのですが、その圃場の周辺はなんと四万十川の流域です。四万十川ってみなさんご存知ですよね。テレビでもよく取り上げられる、日本の最後の清流と言われる川です、当然水が美味しいイメージがありますね。そのお茶っ葉に、その水を掛け算しました。「実は茶どころ四万十川」と、こういう表現で四万十川の手摘みのお茶で入れた、美味しいお茶、これを打ち出したのです。なんとですね、伊勢丹さんのイベントでもたくさん売れました。

 その地域の本質と言うのでしょうか、物だけではなくて、その「だだちゃ豆」だって、甘さだとかいろんな部分で光っているものがあるから、みんなが美味しいといって食べるわけですね。それがまずあります。みかんだってまずかったらおそらくとりあげられません。
 まず、そのものの本質ということ。
 それから、これから地域団体商標というブランド化を考えるときに差別化という意味で、地域の個性をいかにその商品にのせるか、これが2つ目です。
 さらに、それに関わる人。これはものすごい重要なんですね。正林さんからプライドという言葉がありました。どうやって作ってらっしゃるか、これが3つ目です。
 それから4つ目はですね、そこには当然歴史が入っています。だだちゃ豆も「お殿様が・・・」というストーリーありましたね。そういうその時間軸、歴史的なこともそれにのせていくのです。
 最後に「知恵」です。だだちゃ豆の事例でありましたP-プラスもそうなのですが、いろんな知恵が関わってその商品は流れていきます。売られていきます。
 そういう5つの本質を、きちっと見極めてそれを商品に込めて、なおかつそれを伝える、コミュニケーションとして伝えること、それができたときに、それを常にやり続けることによって、ブランドなりその地域商標なり、いわゆる商標が生きてくるのだと思います。
 その結果として、地域の元気の源になっていく、そういう新しい、夢の作り方というのが、この知的財産の中にはあるような気がします。ですからおそらくその特別のものを皆さん探そうとされると思うのですが、そうではないのですね。目の前にあるもの、足元にあるものをもう1回見直していただいて、最初に正林さんがおっしゃったように、東北なら東北の、宮城なら宮城の、山形なら山形のその中にあるまた小さな町の村のですね、よさが確実にあるはずですから、その中にあるものを掘り起こしていただきたいと、この様に思います。

事例紹介およびパネルディスカッションの様子事例紹介およびパネルディスカッションの様子
左から、杉本 淳 氏(ランドブレイン株式会社)、
井 隆 氏(東京農工大学大学院客員教授)、
小野寺 隆 氏(弁理士)、正林 真之 氏(弁理士)、
田沢 繁 氏(JA鶴岡)、佐藤 トシ 氏(地元農家)

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