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所長メッセージ

一日生きることは、一歩前進することでありたい。

所長 正林真之
photo:正林真之

 人生は前向きなことが肝要です。後ろ向きになったり、立ち止まったりしていいことは、あまりないです。

 あまり知られていないことですが、日本のハイテクというのは、実は今に始まったことではないのです。今を遡って約500年前、既に戦国時代からそうであったようです。ですから、1543年に種子島に鉄砲が伝来してから40年後、日本国内には国産の鉄砲があふれており、その数は、当時のヨーロッパの全ての国に存する鉄砲の合計数よりも多く、かつ、その品質もよかったというのです。要は、あの時代に既に、良質のものを大量生産する技術力があったということになるわけです。

 ではここで、その時代に適切な評論家がいたとして、彼にその時点で予測できる「妥当かつ適切な」日本の将来として、その時代から約300年後のものを予測させたとしたら、「日本は強大な軍事力を持ち、それにものを言わせて世界征服を図ることになるだろう」と予測するのが、普通ではないでしょうか。

 けれども、実際には、「そうはならなかった」わけです。このことは、少しでも歴史を勉強した人であれば、事実として知っていることでしょう。その約300年後に起ったことは「黒船」。すなわち、軍事技術として当時(約500年前)は、その質も量もはるかに当時のヨーロッパ諸国を凌駕していたわけなのですが、この当時のヨーロッパ諸国からアウトサイダー的に出て行った人たちが建国した国からの軍事力に、その約300年後は屈することになったのです。

 しかも、その黒船の時分には、当時の日本を動かしていたお偉方は、生意気な若手官僚の勝海舟に「米国は、日本とは違って、能力の高い人のほうが上の地位にいる」と嫌味まで言われる始末です。だが結局、その当時の政府は、その生意気な若手官僚をやり込めることもできず、またその彼以上の政策を行うこともできず、最終的には彼に江戸城明け渡しについての全権を委任することになるのです。

 では、戦国時代には軍事技術No.1の日本が、約300年の間に、どうしてそこまで弱くなってしまったのか、ということを考えるのは、非常に重要であるように思うのです。

 つまり、かつての日本人は、江戸時代という長い太平を謳歌した代償として「軍事技術の低下」と、それによる「不平等条約の締結」という対価を払った、ということになるのです。つい最近では、規制に守られた護送船団方式の金融政策の中での“平和”の代償として「国際競争力の低下」という対価を払い、その結果、規制を外してみたら、13行あった都市銀行が、最終的には3つになってしまったわけです。
 翻って、今の弁理士業界において、もし専権が外されて完全自由化が行われたとしたら、今の時点で約15~6ある大手事務所のうち、いくつが残るのでしょうか?
 周りを見てみましょう。「数の論理」で政治家を動かし、自分らの近隣に大手スーパーができるのを排除してきた商店街は、今どうなっているのでしょう?
 私は、「小さな事務所の集合体」という論理で動いている弁理士会という集団が、いつの日か商店街の「シャッター通り」のようになってしまうのではないかと、本気に憂いています。

 実際に私は、2006年の11月に、ここに単身で切り込んでみました。「持ち回り」で“平和”にやってきた「役員選挙」(副会長選)に立候補したわけです。
 結果は……、わけなく勝ちました。しかも、電話攻勢とかいうものを一切せずに。実際、所員の中には、選挙の投票がいつ終わったのかということを知らない者のほうが多かったのです。なかには、私に投票していないものもいたかもしれません。
 では一方、相手方はどうであったか? 皆さんはもうお分かりですよね。電話も随分とかかってきたことでしょうし、お願いもされたでしょう。にわか「選挙事務所」となった事務所が数多くあったと聞いています。

 では皆さんは、これを読んでいる皆さんは、「果たして、どちらの側にいたいですか?」と自問してみてください。
 どちらを選ぶかは、本当に個人の価値観によるものですけれども、私は、自分の実力でしっかりと立ち、自分の実力で生きていく。そしてそのために、たとえ苦労をしようとも、自分の適正をしっかりと見据え、そこに照準を合わせて正当な努力をして自らの実力を高める道を選びました。

 弁理士という資格を有しているから仕事ができるというのではなく、きちんとした実力があるから仕事を依頼される。そんなふうになって行こうではないですか。もし皆さんがそう思っていただけたのであれば、私とともにこの事務所で働いたり、あるいはクライアントとして一緒に仕事をしたりしなくても、大きな目で見れば国益になることであり、同時に皆さんの人生を豊かにすることにもなると、そう思うのです。