商標法が改正されました。

特許法等の一部を改正する法律(平成26年5月14日法律第36号)により、商標法が改正されました。
この改正により、2015年4月1日より色彩のみからなる商標や、ホログラムや音など、これまで商標として登録し保護することができなかった商標について登録をすることができるようになります。

いつから出願可能なのですか?

関係する政令が先般閣議決定され、平成27年4月1日を施行日とすることが決まりましたので、2015年4月1日より出願が可能となります。

新しいタイプの商標とはどういったものになりますか?

動き・ホログラム・色彩のみ・音・位置 といったものになります。

特許庁HP「新しいタイプの商標の保護制度について」より 

■ 動き商標
文字や図形等が時間の経過に伴って変化する商標
(例えば、テレビやコンピューター画面等に映し出される変化する文字や図形など)
■ ホログラム商標
文字や図形等がホログラフィーその他の方法により変化する商標
(見る角度によって変化して見える文字や図形など
■ 色彩のみからなる商標
単色又は複数の色彩の組合せのみからなる商標(これまでの図形等と色彩が結合したものではない商標)
(例えば、商品の包装紙や広告用の看板に使用される色彩など)
■ 音商標
音楽、音声、自然音等からなる商標であり、聴覚で認識される商標
(例えば、CMなどに使われるサウンドロゴやパソコンの起動音など)
■ 位置商標
文字や図形等の標章を商品等に付す位置が特定される商標

出願の検討をされる場合はどういう点を注意した方がよいでしょうか?

識別性や類否判断についてご確認頂き、出願の検討をなされますことをお奨めいたします。
また新タイプの商標については権利行使について一般的な商標と違った側面(制限)がございますので、こちらもあわせてご検討いただく事をお奨めします。

簡単ではございますが、各商標の識別性や類比判断、権利行使に関する要点をまとめさせて頂きました。

動き商標

識別性について 動きの構成要素となる文字や図形等が商品・役務の特徴等を普通に用いられる方法で表示するものはNG。また、動いた軌跡が実線で表され、それが商品や役務の特徴等を普通に用いられる方法で表示するもののみからなる場合も原則としてNG。
類否判断の基準 識別力のある文字や図形が動く商標と、当該文字や図形からなる商標とは原則として類似する。実線で表された動きを構成する文字等と、当該文字等からなる商標とも原則として類似する。原則として、動きそのものについては商標の要部として抽出しない。
出願の注意事項 時間の経過に伴う標章の変化が特定できるよう1又は2以上の写真又は図で特定する。詳細説明に、動きの商標であること、かつ、その状況を説明する。
その他留意すべき事項 動きの軌跡を破線矢印で表す場合、その破線矢印自体が商標の構成要素でない場合には、その旨、詳細説明に記載する。
権利行使の制限
他法との関係 先行意匠権(動的意匠)と交錯するおそれあり(商29条)。

ホログラム商標

識別性について ホログラム商標において、商品や役務の特徴等が普通に用いられる方法で表示された(複数の)表示面のみから構成されている場合はNG。また、ホログラムを構成する文字や図形等が商品や役務の特徴等を普通に用いられる方法で表示するもののみからなる場合もNG。
類否判断の基準 ホログラム商標が複数の表示面から構成されている場合、各表示面に表された文字・図形等の標章から生ずる外観、称呼、観念を下に類否判断する。各表示面が分離観察できるほど不可分に結合しているとはいえない場合、各表示面の標章と同一又は類似の文字・図形商標とは原則として類似する。単語及び熟語等が複数の表示面に分割等表示され、それらの表示面が不可分に結合していると考えられる場合には、その一の表示面の標章と同一・類似からなる文字商標や図形商標とは原則として非類似とする。
出願の注意事項 ホログラフィーその他の方法による視覚効果により変化する標章の変化の状態が特定できる一又は二以上の図又は写真で特定する。詳細説明に、ホログラム商標であること、その状況を説明する。
その他留意すべき事項 商標(各表示面)に図1、図2などと表示する場合、その番号は、商標を構成する要素ではない旨、詳細説明に記載する。
権利行使の制限 商標が自他商品等識別機能又は出所表示機能を発揮する態様で使用されていないと権利行使しにくい(商26条1項6号)。
他法との関係 先行する著作権(ホログラム(美術)の著作物)と交錯するおそれあり(商29条)。先行著作権者等への権利行使は困難。

色彩のみからなる商標

識別性について 色彩のみからなる商標は原則として識別力なし。
色彩を組み合わせてなる商標については商標全体として考察。
使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるに至っているものについては識別力あり。
類否判断の基準 色vs色
色彩の組み合わせvs図形
単色≠色彩の組み合わせ
単色≠文字と色彩の結合
色≠言葉
出願の注意事項 色彩を表示した図又は写真
【商標の詳細な説明】必須
色彩のみからなる商標と認識し得る記載
・色彩名
・RGBの配合率・色見本帳の番号
・色彩の組み合わせ方
その他留意すべき事項
権利行使の制限 商標が自他商品等識別機能又は出所表示機能を発揮する態様で使用されていないと権利行使しにくい(商26条1項6号)。
他法との関係

音商標

識別性について 商品・役務の提供にあたり自然発生する音は原則NG
単音や極めて短い音は原則NG(5号違反)
商品の効果音は原則NG(6号違反)
自然音は原則NG(6号違反)
他方、音が上記に該当しない場合には、音商標全体としても識別力があると判断される。
類否判断の基準 識別機能を有する箇所のメロディーが同一又は類似するかで判断する
出願の注意事項 商標・物件・詳細説明が必要
・商標は五線譜(音符・音部記号・テンポ・拍子記号・言語的要素)、文字での記載により特定する
・物件は音声ファイルを添付する
・願書には【音からなる商標】の欄を記載する又は【商標の詳細な説明】を記載することもできる
その他留意すべき事項 ・商標がピアノで弾いた音声商標であって、音声ファイルがギターによる音声ファイルである場合は、ピアノによる音声ファイルにする補正は要旨変更にならない
権利行使の制限 商標が自他商品等識別機能又は出所表示機能を発揮する態様で使用されていないと権利行使しにくい(商26条1項6号)。
他法との関係 先行する著作権(音楽の著作物)、著作隣接権(実演家/レコード製作者の権利)と交錯するおそれあり(商29条)。先行著作権者等への権利行使は困難。
著作権は短フレーズには及びにくい場合があるが、著作隣接権は短フレーズでも及ぶ。

音+歌詞の商標

識別性について 識別性のない語を単に読み上げた音は、原則NG
クラシック音楽、歌謡曲、オリジナル曲等の楽曲としてのみ認識される音も原則としてNG
他方、言語的要素に識別力があれば、音商標全体としても識別力があると判断される。
類否判断の基準 音楽的要素と言語的要素の識別機能の有無又は強弱により、要部抽出を行い類否判断を行う
出願の注意事項 商標・物件・詳細説明が必要
・商標は五線譜(音符・音部記号・テンポ・拍子記号・言語的要素)、文字での記載により特定する
・物件は音声ファイルを添付する
・願書には【音からなる商標】の欄を記載する又は【商標の詳細な説明】を記載することもできる
その他留意すべき事項 ・商標がピアノで弾いた音声商標であって、音声ファイルがギターによる音声ファイルである場合は、ピアノによる音声ファイルにする補正は要旨変更にならない
権利行使の制限 商標が自他商品等識別機能又は出所表示機能を発揮する態様で使用されていないと権利行使しにくい(商26条1項6号)。
他法との関係 先行する著作権(音楽の著作物)、著作隣接権(実演家/レコード製作者の権利)と交錯するおそれあり(商29条)。先行著作権者等への権利行使は困難。
著作権は短フレーズには及びにくい場合があるが、著作隣接権は短フレーズでも及ぶ。
著作権は改変まで射程に入る。一方、著作隣接権は改変(物まね)には及ばない。

位置商標

識別性について 位置商標を構成する文字や図形等の標章とその標章が付される位置を総合して商標全体として考察。

位置商標を構成する文字や図形等の標章が識別力ありの場合には標章を付する位置にかかわらず商標全体としても識別力あり。位置商標を構成する文字や図形等の標章が識別力なしの場合には原則として商標全体としても識別力なし。

使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるに至っているものについては識別力あり。
類否判断の基準 位置vs位置
位置vs文字
位置vs図形
出願の注意事項 商標を実線、その他の部分を破線で描く等により商品中の位置を特定できるようにした一又は異なる二以上の図又は写真
【商標の詳細な説明】必須
位置商標と認識しうる記載
・RGB不要
その他留意すべき事項
権利行使の制限 商標が自他商品等識別機能又は出所表示機能を発揮する態様で使用されていないと権利行使しにくい(商26条1項6号)。
他法との関係

色彩と位置の組み合わせ

識別性について 色彩を付する位置を特定したものについてはその位置は考慮せず色彩が識別力を有するかどうか(色彩のみからなる場合は原則として識別力なし。色彩を組み合わせてなる場合はその部分を全体として考察)につき考察。

使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるに至っているものについては識別力あり。色彩及び色彩を付する位置を総合して商標全体として考察。
類否判断の基準 識別機能が認められない場合、商品に付される位置等によって需要者等に与える印象等を総合して考察
出願の注意事項 色彩を当該色彩のみ、その他の部分を破線で描く等により商品等における位置を特定できるように表示した一又は異なる二以上の図又は写真
【商標の詳細な説明】必須
色彩のみからなる商標と認識し得る記載
・色彩名
・RGBの配合率・色見本帳の番号
・色彩の組み合わせ方
その他留意すべき事項
権利行使の制限 商標が自他商品等識別機能又は出所表示機能を発揮する態様で使用されていないと権利行使しにくい(商26条1項6号)。
他法との関係

容器の立体商標 ※

識別性について 指定商品の形状(指定商品の包装の形状を含む。)そのものの範囲を出ないと認識されるにすぎない商標は、識別力なしとして拒絶される(3条1項3号)ため、容器の形状について登録を受ける場合は、使用による識別力の獲得(3条2項)の証明を求められることが多い。
類否判断の基準 原則として、それを特定の方向から観た場合に視覚に映る姿を基準に比較。
特定の方向から観た場合に視覚に映る姿に相応した称呼又は観念も生じ得る
出願の注意事項 「立体商標」である旨を表示する(「立体商標」である旨を追加する補正は要旨変更として却下される場合もあり)。
原則として見れる部分(要部)の図面又は写真を願書に添付。形状が正確に把握できるように複数図(写真)を提出する場合もあり。
その他留意すべき事項 商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状については、3条2項の適用が認められた場合でも、登録できない(4条1項18号)。
権利行使の制限 商品等が当然に備える特徴に対しては権利行使しにくい(商26条1項5号)。
他法との関係 先行特許権等と交錯するおそれあり(商29条)。先行特許権者等への権利行使は困難。

※立体商標の保護制度は今回始まるのではなく平成9年4月1日から始まっていますが、商標制度の歴史から見て比較的新しいタイプの商標です。
立体商標のうち、特に、容器の形状に関するものは、通常では識別標識として認識されにくい要素が、長年の使用を通じて識別標識として認識されるようになった場合に商標登録が認められるという点などで、今回始まる新しいタイプの商標を検討するうえで参考になると思われます。

商標の作成

文字や形はもちろん、音の商標、音楽商標、動く商標、ホログラム商標の作成並びに作成支援を承ります。

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お問合せ

※ 平成26年 4月25日 第186回国会において「特許法等の一部を改正する法律案」として商標法の改正が成立し、平成26年 5月14日に公布されました。

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※ 公布時点で施行日は決まってはおらず、関係する政令が平成27年1月23日に閣議決定され、それにより施行日が決まっております。

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※ 具体的には 特許法等の一部を改正する法律(平成26年法律第36号)の施行期日を定める政令、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令等になります。

※ 商標法の改正と、この政令に基づきまして、新しいタイプの商標保護制度(改正法施行日)が平成27年4月1日から施行されることとなりました。