ホーム > 正林メソッド > 001 平成20年度合格体験記 「環境と仲間と地道な勉強法」

環境と仲間と地道な勉強法

1. はじめに

 私は修士論文発表直前である平成16年春に弁理士受験を決意しました。そして修士論文発表直後に、LECをはじめとする予備校の講座・答練・ゼミを最大限に活用するスタンスで受験勉強を開始しました。結局およそ4年半という歳月を要しましたが、予備校が敷いたレールにしっかり乗って着実に勉強できたことが平成20年度の最終合格につながったものと思います。

 1年目は、愛知県にあるメーカーの新入社員として働きながらの勉強でしたが、職場に隣接する寮での生活で、平日も十分に勉強時間を確保することができました。また、土日には名古屋駅前LECに通うことができる環境でした。

 このように満足のいく環境で勉強することができたこともあり、1回目の受験で短答試験に合格できました。短答合格を契機として都内にある特許事務所へ転職し、2年目以降は、平日にも予備校に通える申し分のない環境で勉強することができました。

 このような私の合格者体験記になりますが簡単に紹介させていただきます。受験生の皆さまの何らかのお役に立つことができれば幸いです。

2. 短答試験について

 短答試験は4回受験して、1回目の受験から毎回合格できました。しかし、答練や模試では安定した成績を修めることができず、常に苦手意識をもっていました。本試験の点数は、合格ボーダーから+4点、+1点、+3点と不安定に推移し、最終合格の年には合格ボーダーから+13点の52点をとることができました。

 いま振り返りますと、1年目の短答試験時から最終合格に至るまでの間で知識面において大きな成長はなかったと思います。しかし、最終合格の4年目に「点数を大幅に伸ばすこと」ができたのは、初心に戻り、2、3年目に怠っていた1年目の勉強法を採用したからだと思います。

書込みや色塗りのされた亀崎さんの条文集 その勉強法は、オーソドックスな条文集(発明協会やPATECH企画の知的財産権法文集)へ書込みや色塗りを行うといった在り来たりのものです。書込みや色塗りのされた条文集を読むことで、視覚的に暗記することができます。

 具体的には、重要事項や過去問、また答練・模試で間違えた事項を関連条文の傍らに書き込んだり、主体はピンク、客体はオレンジ、述語は青、時期・期間は緑、例外は紫と規則を決めて塗り分けたりしました。しかし、書込みや色塗りを闇雲にやってもキリがありません。

 1年目は、LECの短答アドバンステキストを用いた講座に沿って行いました。最終合格の4年目は、1年目から3年目までで使い古した条文集にかえて新たに購入した条文集を用い、過去問で間違えた箇所に重点をおいて行いました。

 少々話が逸れましたが、私がとった勉強法でよかったと思うのは、オーソドックスな条文集を用いたことです。ちまたでは、各法域を比較して勉強でき理解しやすい、あるいは余白が広く書込みがたくさんできるという観点から、短答試験対策には四法対照型の条文集がよいと言われています。

 しかし私は、書込みは極力少なくして暗記量を減らすという観点から四法対照型の条文集は使いませんでした。結果としては、この方法で勉強した1年目には短答合格レベルに達し、最終合格の4年目には点数を大幅に伸ばすことになりました。

 このことから私は、オーソドックスな条文集で在り来たりの勉強をしただけでも短答試験では十分な知識を会得することが可能ではないかと思います。

 もちろん、条文中心の勉強が大切であることは皆さまも十分にご承知であると思います。また、私があえてコメントすることでもありませんが、勉強方法で迷われている方は私が採用したオーソドックスな条文集を用いた勉強法についても検討されてみてはいかがでしょうか。

 開始時期や法域を問わず、いつでもどこからでも始めることができます。思い立った場合、そのときから是非始めてみてください。各予備校で行われる短答答練をペースに行うのもよいかと思います。

3. 論文試験について

 論文試験につきましては、特別な苦手意識をもっていなかったのですが、短答合格者での争いでありハードルも高く、4回受験して合格に至りました。年ごとの結果ですが、特・実、意匠、商標の順に、○○E、B○○、AA○と推移し、その次の平成20年度に合格に至りました。1回目の受験では、積極ミスをしたために商標法でEとなりましたが、年々と成績を上げて合格することができました。なお、成績の評価ですが、平成19年度以前の○ABCDEは、平成20年度におけるABCDEFに対応しています。

 それでは、勉強の流れを1年目から順に説明させていただきます。

(1) 1年目

 1年目は、LECの入門パーフェクトパックを申し込んでいた関係で、9月の論文基礎答練(全6回)、年明けの論文実戦答練(全12回)、直前期の模試(2回分)やインプット講座(2種類)を受講する予定になっていました。弁理士受験を決意した当初から論文の勉強を楽しみにしており、万年筆を新調して論文基礎答練が始まるのが待ち遠しかったと記憶しています。

 9月になり基礎答練が始まりましたが、年明けの実戦答練までの3カ月間がブランクになってしまうことに気が付き、慌てて中上級者向けのステップアップ答練を受講することにしました。インプット系の講座ではなくアウトプット系の答練にしたのは、短答の勉強で暗記に追われていた時期であり、それ以上に暗記量を増やすことが無理だと感じたからです。

 もちろん知識もほとんどないので、全く点数にならないボロボロの答案を書いていました。ただし、万年筆で書くことが楽しかったこともあり、全文書きを中心とした復習には時間をかけました。年明けの実戦答練も同様のスタイルで勉強しました。しかし、短答答練が始まってからは、論文の復習は次第に疎かになったかと思います。

 直前期は、入門パックに組み込まれている模試・インプット講座や、答練の復習だけでなく、さらに模試4回分を追加して受講しました。当時は、たくさんの問題に触れることで満足していましたが、いま思い返しますと、十分な復習もできず時間とお金が無駄であったと思います。

 本試験の結果は上述のように○○Eでした。たまたま直前に復習した箇所が出題されたことで、特許は運よく合格点がとれたにすぎませんでした。一方、判例が不勉強であったこともあり、商標では積極ミスをしてE判定となりました。

 当時は「商標さえミスしなければ合格であり惜しかった。まあ、普通に勉強をしていれば来年は合格できるはずだ!」と勘違いをしていました。しかし、このような勘違いをしたお陰で、モチベーションを下げずに2年目の勉強につなげることができました。

(2) 2年目、3年目

 都内の特許事務所へ転職したことで、2年目以降は予備校の生講座を好きなようにとれるようになり、幸せでした。

 2年目は、正林真之先生のマスター講座・答練・模試、LECの夏ゼミ・秋ゼミ、応用答練・実戦答練、直前答練、直前期の模試などを利用し、たくさんのアウトプットをしました。

 3年目も2年目と同様、たくさんのアウトプットをしました。たくさん勉強したので、答練の成績も段々と上向いていました。しかし、あまりにもたくさんのアウトプット系の講座をとっていたため、復習を十分にすることができず、勉強の効率は非常に悪かったと思います。

 たくさん勉強をしていたので3年目の不合格には大きく打ちのめされましたが、漫然と勉強していたことを大いに反省しました。

(3) 4年目

 4年目は、短答免除制度が導入された年で、短答の合格ボーダーが跳ね上がるとのウワサもあり、2年目や3年目と比較すると短答の勉強に力を入れなければならないという意識もありました。受ける答練の数を減らし、十分に復習するようにしました。また、不得意な単元を洗だす作業が簡単に行えるよう、答案作成後に配られるレジュメに、間違えた箇所にチェックを入れておきました。あらかじめ不得意単元を明確にしておいてもよいのかもしれませんが、短答試験への意識が大きく、不得意単元の洗だし作業は短答試験後になってしまいました。

 しかし3年目まではこのような洗だし作業すらやっていなかったことを考えますと、大きく前進したと感じ、自信にもなりました。また、不得意単元の洗だし作業を論文試験の直前期に行ったことで、不得意単元についての知識の定着も早かったのではないかと思います。

 本試験ですが、近年は問題の傾向が変化しているので、どのような問題がだされても落ち着いて解くことを心がけました。案の定、どの科目も過去にない出題形式でしたが、たくさんの場数を踏んでいたこともあり、割とリラックスして解くことができたと思います。特に、7つの小問が出題された商標法では、端的な答えと端的な理由付けが求められていることをすぐに察知することができました。たくさん書きたいという気持ちを抑え、アッサリと3ページ弱にまとめました。正林先生のマスター講座内には、ワンセンテンスで解答するピンポイント答練があるのですが、「ピンポイント答練で培った力を発揮する時が来た!」と噛み締めながらの解答でした。

 何が幸いするかわかりませんが、試験が終わった時には、時間をかけてたくさん勉強してきてよかったと思いました。合格できたとの安心感はありませんでしたが、やるべきことは全てやったという達成感はありました。

 結果は合格でした。完全な答案ではなかったので、何かの巡り合わせが良かったものと思いますが、やるべきことをやった年に合格することができ、素直にうれしかったです。

4. 口述試験について

 論文試験からその結果発表までの期間に、口述試験に向けて勉強することが得策であることは私がいうまでもありません。しかし多くの受験生は、論文試験前と比べて気を抜いてしまうのではないかと思います。私も1年目から3年目は気を抜いており、正林先生のマスター講座やLECの夏ゼミで勉強を継続させていたものの、勉強のペースは落ちていたと思います。口述試験に進むことができればそのまま最終合格できるものと楽観視していたからです。

 しかし、2年目には入門講座仲間、3年目にはゼミ仲間と、身近な人が口述試験に立て続けに落ち、口述試験を甘く見ていた自分が間違っていることに気付きました。そして4年目にようやく、口述試験勉強を始めました。8月中旬からは予備校主催の口述ゼミに通いました。さらに9月の頭からは、前年度に口述試験に落ちたゼミ仲間と一緒に勉強しました。

 ゼミ仲間との勉強は、交互にアウトプットする問答形式で、それに合わせて各自インプットしてくるというものでした。教材には、今や口述受験生のバイブルともなっている口述要点整理集(GSN)を用いましたが、単元別に掲載された使い勝手のよい教材であると思います。

 論文試験に合格していることがわかった後は、ゼミ仲間と勉強することに加え、正林先生が主催する本番さながらの練習会を筆頭に予備校や会派などの練習会(模試)に参加しました。各練習会の参加人数には制限がありますが、私は10個以上の練習会に申し込むことができ、場数を踏むことができました。

 練習会はアウトプットの機会でもありますが、ゼミ仲間の勧めもあって、練習会で答えられなかった事項や指摘された事項をノートに書き溜め、インプット用に使いました。そのノートを見返すことで、苦手とする条文や間違えの傾向を知ることもできると思います。

 このようにインプットとアウトプットを繰り返していましたが、論文試験後の時間はあっという間に過ぎるもので、すべての単元をマスターすることはできませんでした。しかし、発表前の8月中旬から勉強していたことや、たくさんの模試に参加したこともあり、心に若干の余裕をもって本試験を迎えることができました。

 口述試験は、待合室で12人が待たされ1人ずつ順番に呼ばれる形式でした。私は最後に呼ばれる順番で2時間ほど待たされたものの、知人の次に呼ばれる順番であったこともあり、リラックスして待つことができました。

 しかし、自分の順番となり試験員の方々に面と向かうと緊張するもので、十分な解答をすることができませんでした。結果が発表されるまでは若干の不安もありましたが、試験員の方々との相性や出題問題のめぐり合わせがよかったのか、最終合格を勝ちとることができました。

5. マスターシリーズについて

 次に、私が大変お世話になりました正林先生のマスターシリーズについて紹介させていただきます。

(1) 講座・答練・模試

 私は、勉強を始めた当初から、「一度は受ける価値はある。」、「(良い意味での)衝撃を受けた!」、「受講して良かった!」、「端的に書けるようになった!」といったマスターシリーズの評判を聞いており、1回で合格することができなかったときは、正林先生にお世話になろうと思っていました。実際に2年目から正林先生にお世話になったのですが、「商標法を理解することができたのは、正林先生のお陰であり、マスターシリーズを受けてきて本当に良かった!」という感想を持っています。まさに、評判の通りだと思います。

 先生の教えは、長年の指導経験に基づくものであり、講義では、受験生が間違いやすい箇所や難しいと思う箇所を中心にとり上げて、独自の切り口でわかりやすい解説が行われます。先生の解説講義を受けるだけで、受験に必要な幅広い知識を得ることができたと思っています。

 また、法律用語、判例や基本書におけるキーワード、条文の文言といった言葉の使い方につきましては、他にはない手厚い指導であり、論文の基礎を固めることができました。

 印象に残っている先生の言葉には、「商標法は、特許法や意匠法と作りは似ていますが、本質は全く異なっていまして、しっかり勉強しないとちゃんとした理解はできませんよ!」があります。この言葉を肝に銘じ、マスターシリーズを十分に活用して勉強できたことが、1回目の受験で最低評価のEであった商標法を1年で合格基準の○に持っていくことができたのではないかと思っています。

 この経験から私は、知人から論文の勉強で相談を受けたときには、「正林先生のマスターを受けてみるといいですよ! 特に、商標法についてしっかり理解したいならば是非!」と、自分の経験を交えながら回答しています。体験記を読んで下さった受験生の皆さまにも、私から、正林先生のマスターシリーズをお薦めします。

(2) 口述練習会について

 正林先生による口述練習会は、論文の合格発表の2日後にありました。発表直後ではありましたが、それまでに仲間と一緒に勉強していたこともあり、落ち着いて挑むことができました。会場は正林先生の事務所でしたが、各科目の個室を巡回する形式で行われ、他の練習会と比較しても、本試験に近いものだったと思います。

 正林先生が副査をやられていた特許法では、「代理権の範囲」が出題されました。特許法は比較的暗記できているつもりでしたが、条文番号「9条」を解答することができませんでした。その時、正林先生から「マスターでいつも勉強されていませんかねぇ? 周辺の条文と関連性があったりとかするんですよねぇ。」といったコメントをいただきました。前後の条文にはつながりがあるという基本事項を忘れていたことが、とても恥ずかしかったです。

 このように、最後の最後まで正林先生にはお世話になりっぱなしではありましたが、論文の発表直後に口述練習会の機会を用意してくださったことに感謝の気持ちでいっぱいでした。先生からコメントをいただけたことで、「絶対に最終合格を勝ち取るぞ!」という気持ちを再確認し、口述試験までの期間を、気持ちを高めた状態で過ごすことができました。

6. 「息抜き」について

 「息抜き」は、勉強の効率を上げるためにも必要だと思います。しかし、息抜きのために多くの時間が割かれてしまっては意味がありません。そこで私は、日常生活の中に何かしらの楽しみを見出すようにしていました。

 例えば、1年目は新入社員として寮生活を送っていましたので、週末に寮仲間とドライブを兼ねて食材を買いに行き、料理を楽しんでいました。4年目は、受験生活が長くなってきていたこともあり運動不足を感じていたので、予備校がない日には職場から1?2時間ほど歩いて帰る生活を送っていました。歩いて帰る生活は手軽にできる上、仕事で疲れた頭を休めてから勉強することができるので、お勧めできます。

 また、何よりも、予備校の先生、勉強仲間、家族、職場の仲間など、身近な人との会話を楽しみました。先生や勉強仲間との会話は、辛くて大変とも思える勉強を、楽しいものへと変えてくれました。先生や勉強仲間は、同じ業界で末永く付き合っていく大きな存在であり、これからも敬い、大切にしたいと思います。

7. 最後に

 成績が思うように伸びず、勉強の方向性で迷うこともあるかと思います。このようなとき私は、先生や勉強仲間からのアドバイスに耳を傾け、ひたすら勉強を続けました。この試験は、たくさん勉強しなければ合格することができないからです。迷ったときにも休まずに勉強を続けることが最善の策だと思います。受験生の皆さまの健闘をお祈りします。


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