ホーム > 正林メソッド > 002 平成20年度合格体験記 「論文学習の中核は、[論文マスターシリーズ]」

論文学習の中核は、「論文マスターシリーズ」

1. スケジュールについて

 数ある講座の中から、敢えて難しい正林先生の講座を選択する皆みなは、効率よく目標に到達するために、多方面の投資を惜しまない方々と推測いたします。

 明細書作成が出願から登録、そして期間満了へと続く一連の仲介手続において、一つの山であるように、論文式試験が弁理士試験の山であることは、周知のとおりです。よって、受験期間中において、自らの知識、自信、そしてモチベーションのピークも、当然論文式試験に合わせる必要がでてきます。このタイミング設定、1年間を通じてのスケジュールは、原則として受験機関によって蓄積されたノウハウを基礎にするのがよいと思います。

 論文マスターシリーズに本気で取り組めば、自然とピーク設定管理もできるようにカリキュラムされています。あとは、各自で短答式のスケジュールを上手く組み込めばよいだけです。納富美和先生著作の『攻略法』シリーズ(法学書院)に掲載された年間スケジュール等を参考にしてみてください。

 では具体的に各試験の対処法について、皆さまが私と同じ間違いを繰り返さないための一つのヒントとなることを願いつつ、反省点とともに述べさせていただきます。

2.1 短答

 「条文から離れるな。」、「条文にはじまり、条文に終わる。」

 いずれも先達が繰り返してきたにもかかわらず、やはりこの言葉を強調せずにはいられません。もちろん最近の出題傾向にあわせた判例確認も必須ですが、それも条文の知識を基礎においてこその応用です。条文集は常に肌身離さず、大切にするべきものです。

 なぜならば、頭に入っている条文の数が多ければ多いほど、先生方の仰っている内容や、論文の模範解答を理解する上で、パズルのピース(各条文)がまとまった全体像(法律)をうつしだすように、明確になるからです。

2.2 実際の勉強法

 1年目はLECの“1年合格プラン”に沿ってタスクをこなすのに精一杯で、2年目までは問題と解答の確認に終始してしまいました。結果、1年目は時間配分の失敗から全く合格点に及ばず、2年目は合格点と同じ39点とぎりぎりでした。

 条文の理解不足は、過去に解いた問題と類似問題には対応できても、問われ方が異なると点をとれないことにつながります。過去問を漫然と解くだけでは、短答の問題数の多さへの対処として不適切です。いちばん大切な条文の理解に主眼をおかないと、結局遠回りになるだけです。

 ベストは、条文を一語一句暗記することに尽きます。これは、短答のみならず、論文、口述、ひいては実務上でも一切無駄にならない作業です。

 私は、暗記の重要性から目を逸らしていたので、短答突破が遅くなりました。暗記が苦手だから逃げていたのです。論文の講座は、特にマスターシリーズは毎回の授業が新鮮で、どんどん吸収して実力が上がるので面白くなります。しかし、暗記は単調で孤独な作業です。

 ですがやはり、“外国語の学習法と同様に、弁理士試験の勉強に暗記はやはり大事”なことをマスター講座で学び、開眼しました。外国語習得でも結局、基礎となる単語なくしては文法等理解できないように、条文なくしては論文も理解できないのだと。語学習得ノウハウを少しでも活用できるよう、試行錯誤しました。どうも記憶定着には、短く何度も反復し、語呂等の意味付けや関心事を中心に広げて理解すること、感情との関連付けなどが大事で、就寝前が有効のようです。

2.3 反省・改善点

 あくまでも問題集は、理解度の確認ツールとして反復し用いるもので、短答学習の中核とすべきは、条文や審査基準です。条文を常に手元に置いていたわけではなかったことを反省し、3年目の短答対策では数多く問題を解くよりも、条文の読込みを中心に据えることで、余裕をもって通過することができました。

2.4 参考書・講座の利用方法

 受験機関等の資料や参考書中の、基本書のポイント解説は充実しており、自分で基本書を調べる時間を節約できるので、大いに利用しました。それでも理解できない箇所については、青本等でさらに読込み、理解を深めました。勉強をはじめたころは、青本等基本書をあまり利用せず、一通り知識がついた3年目にいちばん活用しました。

 本来は、なぜこの条文があるのか関心をもって学ぶと理解が深まり、ただ暗記するよりも記憶の定着がよいと思います。

3.1 論文

 3年通して論文マスターシリーズを論文学習の中核に据えました。模範答案を目指すべきゴールとし、各時点での不足部分を段階的に補っていきました。

 何より、この短期間で効率的に合格する戦略は、弁理士試験対策だけでなく、仕事への対処法としても応用できる戦略なので、大きな財産となります。2年目の短答までは、マスター模試で答案構成の仕方と答案スタイルを確立させておき、苦手な短答を早く突破して論文本試験を早く受けたいという論文本試験への憧れを強くもっていました。それが私の短答合格への原動力でした。

3.2 論文本試験の反省点とその後の対策

 しかし、2年目にやっと受けることができた本試験で合格点に達したのは、商標法のみでした。商標法は、“受験生の大半が手薄になるので、少しの力で優位に立てる”との言葉に従ったためで、本当に自信がつき得意分野となりました。一方、その他不合格科目については、具体的に不足部分を補う対策を練ることが喫緊の課題となりました。

 到達点を定め、それに至るには自分に何が不足かをまずは見極めること、現状把握が第1ステップだと考えました。第2ステップは、最適ツールを用意し、暗記や練習という地道な努力をすることです。

 2年目の論文本試験では、特許法の答案構成に四苦八苦し、記述時間が圧倒的に不足しました。原因は明らかに特許法と条約の理解不足です。よって、条文と条約の理解を補うことに注力しました。

 私の論文試験に対する基本姿勢は、納期がタイトな仕事をできるだけ高品質で納品するときと同じです。まずは、制限時間内で完成させ納品することが必須です。最高品質などの高望みをせず、他の受験生と横並びの合格点+αが到達点です。

 本試験では、問題文を読み、答案構成し、実際の執筆まで、躊躇したり熟考する時間は全くありません。この第3ステップのいわば事務処理を、条件反射的に猛スピードでこなせるよう訓練することが、合格への道のりと考えました。

 事前準備ができることのうち一つは、まず問題文のキーワードを理解し、それに適切に連想・反応する力、そして、ある言葉から、特許庁が受験生に求めている回答を吟味し、正しく返す力をつけることです。正しく反応し、相手に返せる引き出しをたくさんもつことも大事です。相手の問い方は様々な切り口があるので、主要な問いの場合でも、枝葉の問いの場合でも、両方に適合できるよう、最低でも定義趣旨の詳細バージョンと簡潔バージョンをまとめ、書けるように練習すると応用がききます。できるだけ多くの論点に対する理由付けを理解して、本試験で無駄なく素早く書けるよう、望ましくは三段論法でまとめるとよいです。理解が難しい理由付けについては、一語一句受験界の通説を暗記し、本試験でそのまま書けるように練習しました。

 与えられる紙面と自分が制限時間内に書ける分量は限られています。丁寧な詳しい論理展開はできず、よけいなことを書くスペースは全くありません。書く分量も多ければよいわけではありません。採点チェック項目に挙がっているであろうキーワードや理由付けが過不足なく記述されているかが問題なのだと思います。まさに、重要なところのみ抽出し、“ポイントについてコンパクトに”が鉄則なのです。

3.3 守備範囲

知的財産法 判例教室 必要最低限しか勉強できなかった、というのが実情です。判例・学説は、正林真之先生の『知的財産法判例教室』(法学書院)と、受験機関で重要とされている範囲内のみです。審査基準は、納富先生の講座でチェックすべき審査基準の重要度ランクを教わりますので、それに沿い軽重つけて確認しました。

 判例は、受験に必要なものを選んで、論理構成や論理展開を学ぶ上で参考にするのがよいと思います。具体的には、全文を一読し、インプットしていくのは『知的財産法判例教室』でピックアップされているキーワードと論理展開に絞るとよいです。

3.4 答練活用

 答練は、積極的にトライアンドエラーをする場ととらえ、点数に一喜一憂せずどんどん間違えました。本試験までにできるだけ自分の不理解や苦手箇所を洗いだし、克服する練習の機会です。何度も答案構成を試みていくうちに、1回目では落としていた論点も、次回までには学んでいるはずですから、徐々に間違わなくなりますので、全文書きをしなくても、答案構成だけでこの問題パターンは解くことができるという自信が備わります。その積み重ねが大切だと思います。

 2年目の論文失敗や答練での不注意を反省に、問題文はあせらず、何度も注意して読むことに気を配りました。諸先生方がおっしゃるとおり、本試験の問題には一語たりとも無駄な・意味のない言葉など入っていません。落とし穴もありますが、親切なヒントもたくさんちりばめられています。そういったキーワードを読み飛ばさずに、最後まで一語一句に注意を払い、そして回答に正しく反映させることが、大事な決まりごと・作法の一つといえます。

 マスターシリーズを中核に、その他の受験機関にはあまり手を広げませんでした。特に3年目は、新しい問題に挑戦していくというよりは、過去に解いたことのある問題を復習し、漏れなくかつ簡潔な回答を作成することに注力しました。

 本試験では、必要以上に力が入ってしまうことがあります。ともすると主要論点ではないのに、自分が得意な論点等が目に付いてしまい書きすぎて、大事な論点が薄い記載になると致命的です。他の受験生とのバランスを考えたうえで、書かない勇気も必要です。

 措置問題の場合は特に、全て考えられる措置を羅列して、該当するものを残していく、というのが答案構成の基本です。問題文中のポイントを下線等でマークして、大事な文節でスラッシュを入れたりして、答案構成時、書き始め、見直しと3回ほど落としている項目がないか確認するよう心がけました。それでも本試験ではなかなか完璧に解くことはできず、落としてしまった項目がでてしまい、後で“しまった”と悔やむ論点もあるわけです。

3.5 文系・実務未経験者として

 問題文中の見慣れない機械や化学の用語、数字等に対する苦手意識が、文系の受験生には多少あると思います。このアレルギーをなるべく早くなくすように、数字や技術の言葉等がでる問題を集中して繰り返し解き、明細書を見るなど、慣れるよう心がけました。逆に、文系にとっては理解しやすい実施権者間の対抗要件等は、得意分野になるので早めに答案パターンを確立しておいて、苦手な問題に注力したほうが有効だと思います。

 また、明細書作成等の実務に携わっていない場合、記載要件等への注意力が不足しがちです。普段から意識して、関心を高めておくとよいと思います。受験生は実務家のような回答をする必要はないものの、いつでも実務ができる程度の知識を有していることは示さなければならないからです。

3.6 選択科目対策

 民法は最後まで不十分な理解と勉強のまま本試験を迎えてしまい、公表論点をきちんと全て論述するには程遠い答案でした。民法・著作権法は、四法とは答案の作法が全く異なります。受験機関に答案のスタイルをご教示いただき、訂正する機会を設けた方が良いと思います。

 論点が多く効率的に練習ができ最終調整に役立つので、司法試験の著作権法の問題を利用させていただきました。また、頻出箇所・出題傾向は受験機関がリサーチしてくれています。特に著作権法は出題範囲が限られていますので、的を絞って効率よく勉強できます。

3.7 勉強ツール

 短答の勉強に切り替える時期の直前が、論文のピークにいったん達するときだと思います。短答終了後、いかに早く論文モードに戻るかが、ポイントです。論文へ頭を切り替える際に使う、定義・趣旨・論点ブロックは自作し、常に目をとおしておき、見慣れたツールでのリセットを図りました。

 また、口を動かす、手を動かす、または聞く、と種々記憶のパターンがあると思いますが、自分には聞くのが適しているので、講義テープはもちろん、自分で条文・定義・趣旨を録音し、繰り返し聞いていました。

4. 口述

 できるだけ多くの条文をインプットし、参考書や過去問に対応できるよう練習を重ねることが大切です。論文試験の特許法で致命的なミスをしなければ、残りの科目でも口述でも落ち着いて普段の力を発揮する心の余裕がでてきますし、集中度も高まります。

5. 地方での勉強

 2年目の短答からは、東京を離れ地方に移動し、ゼミ中心で勉強しました。東京にいる間に、マスターシリーズで基礎を固め、その後、地方でじっくりその復習ができたのが、よい結果を生んだと思います。マスターシリーズの熱気溢れる模試の雰囲気は、通信講座では味わえないと思います。地方の受験生も、なんとか機会をつくって、正林先生の生講議を受け、あの緊張感を体験されることをお勧めいたします。


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