農業は工業よりもはるかに地域に密着しています。農業を活性化すれば地域が活性化します。もちろん工業重視というのもありますが、やはり農業ですね。土や、大気、太陽の光など、その地域特有のものがあるからこそ農産物があるということです。そこで、財産というのは何だろうという話です。
地域というと例えば、宇治茶などの高級なお茶は、太陽の光が燦々と照っている所ではダメなわけです。紅茶は逆ですね。紅茶の場合は太陽の光が燦々と照っている所が良いわけですからスリランカなどで収穫できるのですが、高級な玉露などのお茶は日陰でないとダメなのです。ですから、霧が多い所や山間部などの、そういったところで栽培されるわけです。しかもお茶の場合は、土の中にアルミニウムが含まれていないといけない、酸性でないといけない、といったこともあり、富士山の火山灰がたくさん積み重なった静岡県の一部とかそういったところで収穫できるわけです。
つまり、他の地域に同じ苗を持っていっても同じようには収穫できないのです。このように地域に密着しているということも大事なことになります。
ではそこで財産って何でしょう?
お茶が栽培できる産地であれば、そのお茶が栽培できる土壌や気候というものも財産の1つと考えられることになります。
ところで、財産という場合に、皆さんはどのようなものを想像するでしょうか?
一般的には貨幣や、金、株式などを考えるわけですが、ここで財産というのは何かということを、きちんと理解していないと、農業知財というときに何なのかわからなくなります。農業知財というのは農業の知的財産、つまり財産の一種ですね。この財産を適当に考えてはいけません。
この財産というのは、法律上は譲渡できないといけないのですね。譲渡して交換できないといけないのです。また、活用できないといけない。では、「土壌」はどうかといいますと、活用はできますが譲渡はできない。活用といっても栽培するだけで、他へ持って行ってなんとかなるものではない。ということで、いわゆる皆さんが持っているお金とは違います。皆さんが持っているお金は、アメリカに行ってドルと交換すれば、同じ貨幣価値を持つことができます。しかし、土は持って行っても何の価値もありません。
ではどうすればいいのでしょうか。そこで農業知財なのです。実はこの農業知財の場合、「土壌」とかに結びついたものを、交換できる権利に変えようという考え方をするわけです。交換できる権利というのは特許権や商標権といったものです。ここで言えることは、財産というのは交換できないといけない、また、活用できないといけない、ですから皆さんが財産といっている中でも交換や活用のできないものは財産ではありません。