知的財産権の活用による地域活性化セミナー | 第1部 セミナー : 地域ブランドの確立

平成19年11月19日 東北農政局にて行われた
「知的財産権の活用による地域活性化セミナー」 紹介ページ

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第一部 地域農作物とブランド、商標

地域ブランドの確立

ブランドの策定

ブランドの策定 紀州梅の話と三ツ矢サイダー。商標は決して理屈で測れるものではなく、万人が見て価値があるイメージ。例えば、梅だったら紀州、サイダーだったら三ツ矢というように、皆さんがきちっと範囲を策定することが重要です。
 そういった意味で商標というのは、産物に対する名声ということです。その名声を無体財産と呼ぶのですが、これからの課題は、この無体財産をどうやって活用できる財産にするのかというところです。それが今日の話の中心になります。

ブランドの保護

ブランドの保護 「ブランドの保護」というのは、強力な権利の保護の必要性ということです。ある物が流行ると、まがい物がでてきます。それが灯った火を消すが如く大量に押し寄せ、あっという間に品質の低下が起こり、値段の低下も起こる。その結果、物は消えていくということになります。では、何で保護をすればよいのかというと商標権しかないということになります。それで今の制度があります。

ブランドの活用

ブランドの活用 「ブランドの活用(商標制度の活用)」というのは、財産的側面があるのですが、これが意外に知られていません。例えば、お城は、本丸と外濠と兵隊とがいるわけです。守るべきものは何処で、攻めるべきものは何処かというのがあるわけです。皆さんの財産にしても、お持ちの財産には老後に備えて絶対守るものと、活用するものとがあるわけです。実は商標権も同じです。

 例えば、ある地方で、柑橘類について商標登録がされました。「じゃばら」という柑橘類です。ゆずに似たような形をしていますが、その「じゃばら」はその地域でしか採れません。しかし、じゃばらの加工品、例えばマーマレードやジャムは他の地域でも加工することができます。
 じゃばらが採れるのは和歌山県の北山村というところです。北山村の「じゃばら」をライセンスする人はいません。他では作れないのですから。他で作ったまがい物がでたら、すぐに差し止めをすべきです。ですから、北山村さんは、「じゃばら」という商標を取得しました。それは、絶対自分が守るべきもので、妥協すべきものではありません。まして人に貸すなどはダメです。自分の魂を貸すようなものです。
 しかし、加工品をつくるのはなかなか大変です。その場合、「じゃばら」という商標権を、化粧品や薬、ジャムなどに与え、他人に貸して収益を得るのです。これはあきらかに投資です。「守り抜く部分」と、「投資の部分」と、つまり守りと攻めですね。これを考えながらお金を使って将来稼げる部分には、ある程度お金をかけても将来回収できるのではないかという形でやるとか、そういったことを踏まえてもっと地域ブランドを考えなくてはいけません。最近の地域ブランドの話は守り一辺倒、攻め一辺倒のどちらかです。
 自分の作付面積を増やし、お金を儲けるために本来売ってはいけないような本丸まで貸して収益を上げる。お城も本丸を見学できて、そこに土足で入れるとしたらこれは結構な料金をとれると思います。でもその本丸の希少性は全く失われてしまいます。
 北山村のじゃばらを他で栽培できるという話になったら、北山村で採れた本物はまったく意味がありません。
 国産のうなぎと外国産のうなぎの何が違うのでしょうか?
 「やっぱり味が違うし、そもそも価値が違う。」ということがあるからこそ国産をみんなが買うわけであって、まったく品質が同じものを作れるということであれば、ブランドの意味がまったくありません。
 自分の本丸を切り売りするということはそういうことです。夢を失ってしまいます。自分が一番守るべきもの、その守るべきものが一番高く売れます。しかし、それを売ったらどうなるのか。
 私はいつもいうのですが、守るべきものと、攻めるべきものとは、区別してください。そうしないと、大変なことになります。守り一辺倒では防衛費だけかかって、まったく収益が得られず、いつかジリ貧になって結局守るべきものを売らなくてはいけなくなる。攻め一辺倒で、売ってはいけないものまで売ってしまったら夢がなくなる。
 いいことをいった人がいます。「プライドは自分が捨てたり放置しない限りは誰にも奪うことができない」。農産物に対して皆さんプライドが絶対あるはずです。プライドがないということは、自分で放棄したか捨ててしまったかです。自分が守るべきものを捨てるということは、プライドも何もないものを作るということになります。
 丹精を込めた農産物にプライドを持ってない人はいないと思います。重要なのは活用といったときに何もかも活用して良いわけではなく、一番高いものは一番活用してはいけないものだということなのです。
 自分たちの財産がそんなに価値あるものではないということは、その中に住んでいるからわからないだけの話で、一歩出ればすぐにわかります。それがお金になります。しかし、いちばんお金になる部分は活用してはいけないということです。
 そういうことから考えますと、「ブランドの維持」というのはすぐわかります。

ブランドの維持

ブランドの維持 プライドを失わないことです。プライドを失うような仕事をしないことです。結局、妥協すれば、プライドは失われます。ワインの中に一滴でも泥水をいれれば、全体が泥水ですから、それではすべてを失ってしまいます。
 ですから、ブランドを守るということは、プライドを守り維持するということですから並大抵のことではありません。でも並大抵のことでないというのは、財産的価値があるということの裏返しだと思いませんか。

ブランドの促進

ブランドの促進 ブランドの維持があってこそ「ブランドの促進」があるわけですが、価値がないものをいくら宣伝しても無理があります。インターネットなどを用いる手段がありますが、価値がないものはいくら宣伝しても無理です。価値は自分で作りあげることができますが、捨てることも放棄もできるという関係です。
 自分でプライドを捨てたり、放棄しない限りは他人が奪うことはありません。なくなったのはすべて自分が捨てた、または放棄したということです。

 次は活用の事例です。



商標権とは

商標権は、商標を使用する者の業務上の信用を維持し、需要者の利益を保護するため、商標法に基づいて設定されるものであり、指定商品又は指定役務についての登録商標の使用を独占し、さらには他人によるその類似範囲の使用を排除することができることを内容とする権利です。
この商標権の効力は、日本の領域内に全て及びます。
→特許庁による解説ページ



和歌山県北山村の取り組み

じゃばら

「じゃばら」とは、和歌山県北山村だけに自生していた柑橘系の果実で、1979年種苗法によって品種登録がされ独占的に北山村内だけで、栽培・加工・販売されていました。
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1994年、独占的使用権が切れると、村外での栽培流出が始まり、同時に、じゃばら関係の商標等知的財産権が他者によって取得され、北山村では対応に苦慮していました。また、各地で「じゃばら」の栽培が奨励され始め、今後の商品の差別化が課題となりました。
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そこで北山村では、北山村産物の特徴を活かした知的財産権の利活用による地域活性化の取り組みを現在推進中です。デザイナーや弁理士などにより、知財活用実務の実施、更に村の総合的振興への参画も行われています。また、「じゃばら村」という新たな商標を取得し、新たな地域振興の種がどんどん膨らんでいます。