もうひとつ事例を紹介します。今度は特許です。
チシマザサという竹があります。ネマガリダケともいわれているもので、山岳地の急傾斜の場所に自生する山菜です。採取が非常に困難で、実は何人かの方が命を落としています。これをなんとかして自分で育てたいというところから始まりました。
山間地、つまり平坦地での栽培の研究ですが、この研究は鶴岡高専の山濱先生がされました。減反休耕田でチシマザサを栽培できないかといったところから始まり、出願して特許をとりました。成果として遊休農地の利用促進に結びつきます。遊休農地というのは減反休耕田ですね。付加価値の高い作物を開発したわけです。これは特許公報です。
どのようにしたかというと、彼が一番やりたかったのはプランターでも作れるようにしたかったのです。そして、プランターでも作れるようにしました。これは本当に研究を重ねられた結果なのです。
なぜチシマザサを取りに行って人が命を落とすのか?
今の山岳地だって足元がしっかりしていれば死ぬなんてことはないわけです。では、どうして命を落とすのかというと、滑り落ちるからだということがわかったのです。よく見てみるとチシマザサというのは葉っぱや腐葉土のやわらかい土に生えるのです。そこで、根を伸ばします。それと効き腕があったのです。左利きと右利きです。絡み合うのではなくグルッと巻くように根が伸びます。ですから、急斜面でチシマザサをつかむと、ずるっと抜けてそのまま下に落ちてしまいます。
そのようなことがわかり、同じように作ったらどうかということで、まず土壌を変えました。減反休耕田の上に葉っぱや腐葉土を敷き、そこにうまく根が通るようにしたのですね。これは結果から見れば簡単ですが、発明するのにはすごく考えられているのです。何回も失敗してようやく減反休耕田で現在チシマザサが栽培されています。山で採るものより、やわらかくて美味しいそうです。そういったこともありかなり引き合いが来ているとのことです。