知的財産権の活用による地域活性化セミナー | 第1部 セミナー : これまでの地域農作物の商標

平成19年11月19日 東北農政局にて行われた
「知的財産権の活用による地域活性化セミナー」 紹介ページ

印刷用表示/文字サイズ変更
印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |

| ホーム | 第1部 セミナー | これまでの地域農作物の商標 |

第一部 地域農作物とブランド、商標

これまでの地域農作物の商標
 地域団体商標制度がスタートする前に、地域農作物の商標が取得されていた例があります。

地域名と商品名の組み合せ

地域農作物商標の取得方法1 商標の候補は、「地域名」「商品名」 からなります。例えば、「三輪素麺」、「夕張メロン」、「前沢牛」があります。「夕張メロン」は「夕張」が地域名で、「メロン」が普通名称です。
 さらに近隣の県で、ある程度周知されていないといけません。周知ならよいのですが、その一方で、あまりにも知られすぎていて、一般の名称と変わらないものはダメなのです。
 例えば「瀬戸物」。瀬戸地方で作られた焼き物ですね。しかし、皆さんが「瀬戸物」というときには、特に瀬戸地方に限ったものとはあまり考えていないと思います。「夕張メロン」の場合には、夕張で作られたのだなと思いますよね。それに対して、「瀬戸物」といった場合には瀬戸地方で作られていなくても瀬戸物ということがほとんどです。そうなってしまうと商標権がとれません。あまりにも有名になりすぎて、普通名称になってしまったという場合には商標権はとれないのです。

図形と文字の組み合せ

地域農作物商標の取得方法2 「関あじ、関さば」のように、図案化すると登録できるようになります。また、別の商標と組み合わせたりして登録することができます。つまり真正面から戦わず、脇からいくということですが、実は問題があります。先ほどの「北山村のじゃばら」ですが、「じゃばら」は登録されています。普通名称で、しかも出願人は個人です。
 個人というのは曲者です。法人は永遠に生きますが、個人は問題です。おわかりになりますでしょうか。人は「忘れる、変わる、死ぬ」ということです。契約書がなければ、「忘れる、変わる、死ぬ」ということで、特に相続が起こった場合には、お金になるものがあった場合に非常に困るわけです。
 しかも悪いことに商標登録というのは登録してから5年経つとやり直しが効きません。本来無効な商標も生きてしまいます。そういったことで、無効な商標が横行している例が多くあります。
 そのような状況の中で地域団体商標を守らなくてはいけません。うまく法制度の穴を抜けて登録してしまっている個人がいるということがあり、この権利関係の調整が難しくて、ある地域では、非常に難航しています。
 皆さんも調べてみると、これからとろうと思っている地域団体商標がすでに取得されていて、よくみると権利者は個人だったということがあります。このようにこじれてしまった場合には、弁理士会に相談するか、近くの弁理士に相談してください。

独自の商品名

地域農作物商標の取得方法3 「独自の商品名」で登録されている方もおられますが、このような独自の商品名については、皆さんがそれぞれの発想をもって考えるというということが必要です。
 余談になりますが、「アドベリー」は「安曇川」からきているようですね。



地域団体商標のはじまり

平成17年に商標法が改正、平成18年4月1日に施行され、地域団体商標制度がスタートしました。
改正前の商標法では、地域名と商品名からなる商標は、商標としての識別力を有しない、特定の者の独占になじまない等の理由により、図形と組み合わされた場合や、全国的な知名度を獲得した場合を除き、商標登録を受けることはできませんでした。



3条2項とは

「商標審査基準」第2、第3条第2項(使用による識別性)には、以下のように書かれています。
「前項第3号から第5項までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。」
そして、「本項でいう「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」とは、特定の者の出所表示として、その商品又は役務の需要者の間で全国的に認識されているものをいう。」とされています。

全国的な知名度を獲得するまでは登録を受けられず、その間、他者の便乗を排除することができませんでした。