知的財産権の活用による地域活性化セミナー | 第2部 事例紹介およびパネルディスカッション : だだちゃ豆のブランドの維持にかける努力

平成19年11月19日 東北農政局にて行われた
「知的財産権の活用による地域活性化セミナー」 紹介ページ

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第2部 事例紹介およびパネルディスカッション

だだちゃ豆のブランドの維持にかける努力
福井氏
 田沢さん。今、佐藤さんのお話を伺いましたが、要するに佐藤さんたちのグループの思いが最初にあって、JAさんがある意味バックアップされていった感じがしたのですが、まさにそこですよね、スタートは?

田沢氏
 そうですね。

福井氏
 地域の方々に引き継いでいく中で、旧鶴岡市という縛りをつけられたとおっしゃいましたが、品質的な基準であるとか、いわゆる「だだちゃ豆とは何ぞや」という、そういった縛りのようなものは作ってらっしゃるのですか?

田沢氏
 昭和61年にだだちゃ豆の専門部を立ち上げたわけですけれども、専門部には非常に厳しい縛りがあります。まず第1は種子。これは夕張のメロンでも、静岡のマスクメロンでもそうですが、種子をどうするのかということがあります。だだちゃ豆の種子、白山地区のだだちゃ豆が一番のメインであるわけなんですけれども、そこにも何軒か、うちが元祖だ、うちが本家だというのがあります。それから小真木地区に行けば、小真木だだちゃという種を大事に守ってらっしゃる方がいらっしゃいます。そういう種を、「だだちゃ」として称していいのは何だろうかということで、専門部では現在6系統を選定しています。品種というよりも系統ですね。早生系から晩生系まで6つの系統を「だだちゃ」と称してよろしいということにしております。その種についてはすべて、専門部の専用圃場で採種をするという体制をとっております。
 出荷するだだちゃ豆一袋250グラム入り、約250円の市場売りになるわけですが、1キロで1000円、そのうち20円を種子基金ということで集めております。そして、種を作っている方々に保証していくということです。専門部の中で技術的に高い人に、6つの系統の品種をそれぞれ毎年選抜してもらって原原種を作る。それを今度原種として周辺の、技術の高い農家の方を採種圃場として指定をして作っていただくということです。確実に種子の由来がはっきりするものを使い、専門部の種子以外は使わないということです。先ほど申し上げた、お隣のJA庄内たがわさんでは、民間から庄内1号、3号、5号といわれる品種を入れていらっしゃいますが、それを同じ「だだちゃ」と売ってもらっては困るということでの線引きをしております。
 当然、佐藤トシさんもそうですし、白山地区の皆さんは自家採取です。基本的に自家採種ですので、自家採種で大事に大事に自分の家の種を持っているわけで、それを、自分のところで販売をするということについてJA鶴岡の専門部では、なんら規制をしていません。JA鶴岡で袋に入れて出荷するものについては、すべて専門部の種子という整理の仕方をしてございます。
 そして栽培の方法ですが、マニュアルを作っています。基本的にはこういう栽培でやってください。土壌については、必ず土壌分析をし、足りない部分については、肥料なり堆肥を補うという土作りもきちっとやるということになっています。
2粒ザヤが基本のだだちゃ2粒ザヤが基本のだだちゃ それから出荷の検査。これも非常に厳しくて、いわゆる2粒ザヤがだだちゃ豆の基本なのですが、2粒ザヤ、3粒ザヤをA品とし、1粒ザヤはすべて格外品に落としてくださいとしています。だだちゃ豆の特徴で、2割近くが1粒ザヤになってしまいます。それを全部個別農家で選別し、格外品は加工品に回しています。ですから、だだちゃ豆は一本規格です。A品しかありません。あくまでもA品と格外、格外は加工用にまわすと、というやりかたで選別を厳しくしております。

殿様のだだちゃ豆「むき豆」フリーズドライ殿様のだだちゃ豆
「むき豆」フリーズドライ
(JA鶴岡)

 下のグラフを見ていただくとわかるのですが、平成17年は全国的にも枝豆大豊作の年でした。前段産地の千葉、茨城が遅れた、後段産地の我々山形、新潟、秋田が早まり前進出荷になりました。東京が枝豆であふれました。だだちゃ豆も、反収が350キロをゆうに超す大豊作になりました。単価がなんと600円を割るという大暴落です。

だだちゃ豆年次別実績グラフ(出荷量&単価)JA鶴岡茶毛枝豆専門部のデータです。

 産地ブランドをいかに守っていくのか、せっかく全国トップのブランドになったところを、このまま落としてよいのかという、大変深刻な状況です。平成18年産でなんとかその価格を取り戻そうということでやり始めたのが、今までは見た目での検査でしたが、今度は食べてみての検査をはじめました。出荷のときに全部袋に入ってきますから、抜き打ちでサンプルをとります。そして即その場で茹でて食べてみます。これをやったら、まずい枝豆を持ってきた人は一発で分かるわけです。あるいは前日採ったものを予冷庫にいれないで持ってきたとなると、味が落ちていますから、この食べてみての検査をやったとたんに、味のレベルが下の部分がなくなったというか、ほとんどが一定レベル以上になってきました。生産者全員が持ってきている中で、おまえさんのやつはこの味だ。食べてみろと言われますから大変な状態です。下手なものを持って来られないという意識が非常に高まりまして、18年産、今年の19年産も味の面でのクレームはほとんどなくなりました。
 現在はJA鶴岡の専門部318名、それから農協以外に出されている人も含めると、700名ぐらいの栽培者だと思います。全体で700ヘクタールですから、1人平均で1ヘクタール作っているわけです。専門部の方々もちょうど今、1人当たり1ヘクタールです。先ほど申し上げた6系統を、2ヶ月間平準出荷するために栽培系統の割り当てをしています。前段でこの系統を2割、中盤にこの系統を3割植えてくれ、後段にこの系統とこの系統を1割ずつ植えてくれというようなことで、7月25日から9月15日まで、毎日きちっと20トン集荷できる体制をとろうと、出荷数量の振れをなくするという努力を専門部でしていただいています。そのようなことで、産地として信頼される商品を作っていくということがブランドを守っていくことだと頑張っています。