知的財産権の活用による地域活性化セミナー | 第2部 事例紹介およびパネルディスカッション : 特許の可能性とポイント

平成19年11月19日 東北農政局にて行われた
「知的財産権の活用による地域活性化セミナー」 紹介ページ

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第2部 事例紹介およびパネルディスカッション

特許の可能性とポイント
福井氏
 正林さん、このだだちゃ豆の話は非常に素晴らしい話で、取り組みも抜群だと思うのですが、ひとつ気になったのが、P-プラスですね。住友ベークライトさんと共同開発されたと伺いました。
 私、素人ですが、特許についてですが、これを共同出願していれば、こっちのほうが大儲けしたのではないでしょうか。
 先日、名古屋で、あのりふぐ(天然とらふぐ)の話をしたときに、非常に特異な工夫があって、これが特許になったのではないか。今、日本中の業者が使っているその工夫、やり方、どうもふぐを売るよりも、そちらを売っていたほうが儲かったのではという話が後で出てきたそうです。そのようなところ、だだちゃ豆さんに対するエールも含めて、そのあたりの可能性みたいなものをお聞かせください。

正林氏
 そうですね、非常に難しい法的な質問された感じですが、まずは、特許の共有というのは非常に難しいのですね。特許の共有の場合ですと、お互いを牽制しあう関係になります。商標でも似たような感じなのですが、自分で袋を作ったり販売したりすることは自由にできるのですけれども、権利のライセンスですね、人に貸したりすること、ライセンスしたり、人に譲渡したりするということは、お互いできなくなります。
 第三者に作らせる、誰かに譲り渡すということができなくなってしまいます。そういった意味でお互いに牽制しあう関係になるのです。ですから共同出願をするということは、ある意味お互い運命共同体になりますということなのです。
 大抵、大企業はやりたがりません。ですから共同出願に持ってくのが結構難しいのですが、確かにできていれば相当面白い関係になったと思います。代替案としては、企業では袋の基本的な組成について特許を取ったというときに、この袋を作って枝豆用のものとした、ということについてはベスト特許が申請できるのです。それをもしもJAさんのほうで取っていれば、だだちゃ豆以外でこの袋を使用した場合に、ライセンスの使用料を取れたのではないかと思います。
 ただ、それは後から言えたことです。誰も未来は読めません。要するにこれが果たして本当に成功するかどうか分からないので、そこで特許出願費用をだしてよいかどうか分からないわけです。
 ただ1つ、やらなくてはならないことがあります。それは自分を守ることです。
 「自分を守ること」これを忘れがちです。誰が最初に発案して、誰がやったのかということを証拠に残しておかないと交渉材料がなくなります。自分の発案だという証拠が残っていないと何もいえないのですね。つまり、裁判所では神様の目から見た正義が通るわけではなくて、証拠の有無です。ですから何が必要かというと「確定日付」を取っておく必要があります。
 どのような打ち合わせしました、どういったアイデアをだしましたということに対して、特許、商標、意匠権を取る必要は全くないということですね。最低限の方法として「確定日付」です。自分がこれを確かに発案したという証拠を残しておく必要があります。今、確定日付と言いましたが、公証人ができます。その手数料、実は800円ぐらいなんです。弁理士が特許出願をしたら30万ぐらい掛かります。それに比べて800円ぐらいです。代行を頼んでも3000円です。そのぐらいはしておいたほうがよいですね。
 さらに安い方法は、自分宛に書留を送っておくことです。書留は完全にスタンプが押されますので、日付が確定されます。ただその時は、絶対に剥がれないというように封、シールしておく必要があります。裁判所に持って行ったときには、その場で封を開けたことになりますよね。ですから、中に何が入っていて、どのようなものが入っているのかきちんと控えて、封をしっかりする。争いになったときには、封を開くという話にしておかないと、自分が責められたときに何もできません。
 攻めるまでの特許はとる必要ない。それは何故か? ・・・未来は読めないからです。しかし、守りだけはやっておかないと相手方から何をされるか分かりません。相手も、いろんな手段をとってきますので、やはり最低限守っておいて、守っていればこそ攻めることもできるのです。皆さんにお勧めするのは、弁理士が足りなければ、弁理士に頼むだけではなく、安くできるのであれば、高いものを払う必要はないということです。とにかく「確定日付」。いつやったかが大事なのです。ですからその日付が分かる証拠をとっておいてください。これだけはお願いしたいと思います。